「八将軍(はっしょうぐん)」は、陰陽道における凶神の総称です。日本では平安時代以降に陰陽師の実践体系として整理され、方位や時に宿る性質を見立てるために活用されてきました。同じく有名な凶神に「大将軍」が存在しますが、両者は性格・影響・出現周期などに明確な違いがあります。本記事では、八将軍の基礎知識と大将軍との違いを、なるべくやさしく整理します。
八将軍とは
八将軍とは、陰陽道において八柱の神霊をまとめた呼称です。「八神(はっしん)」とも呼ばれ、方位に現れて人々の生活に影響を与える存在とされています。特徴として、以下の点がよく語られます。
- 八柱から成る点
- 方位ごとの吉凶を司る
- 主に凶神として扱われる
八将軍の名は時代や書物により差がありますが、代表例は以下のとおりです。
- 太歳(たいさい)
- 大将軍(たいしょうぐん)
- 歳刑(さいけい)
- 歳破(さいは)
- 歳殺(さいさつ)
- 黄幡(こうばん)
- 豹尾(ひょうび)
- 咸池(かんち)
これらは年ごとに巡り、吉凶を示す基礎となります。そのため、陰陽道では移動や建築、婚礼などの「事始め」を行う際に八将軍がどこへ位置しているかを考慮しました。
大将軍との違い
八将軍と混同されがちな存在に「大将軍」があります。大将軍は八将軍の一柱であり、特に強力な凶神として扱われます。両者の違いを整理すると以下のようになります。
- 八将軍:八柱の総称
- 大将軍:八将軍の中の一柱
つまり、大将軍は八将軍の中に含まれる存在であり、別物ではありません。ただし、大将軍が特に強力だとされることから、単独で語られることも多く、誤解が生じやすい点です。
大将軍の特徴
大将軍は、方位に宿った際にその方向での移動・建築・旅行などを慎むべきとされ、強い制約をもたらす神とされています。
- 凶意が強い
- 巡りの期間に特徴がある(3年間同じ方位)
- 生活の指針に強く影響する
特に「3年間同じ方位に留まる」という点は有名で、陰陽道では重く扱われました。
八将軍の性質
八将軍は全体として凶意を持ちますが、その性質や影響度合いは神ごとに異なります。「大将軍」が特に強力とされる一方、「太歳」は年の支配者として運勢全般に関わり、影響が広範囲に及ぶと考えられました。
現代での見方
現代では日常生活の判断に影響を及ぼすことは少なくなりましたが、暦や方位の研究、伝統文化の観点では八将軍の知識は価値があります。
- 家相・方位術への応用
- 神仏・陰陽道文化の理解
- 暦を読む視点の拡張
迷信として切り捨てるのではなく、歴史的な知識として理解することで、文化への洞察が深まります。
まとめ
八将軍は陰陽道における八柱の凶神の総称であり、その中に特に強い力を持つ大将軍が含まれています。大将軍は3年間同じ方位に留まるなど特異な性質から単独で語られることが多く、誤解されやすい存在です。八将軍の理解は、方位術や歴史的文化を読み解く上で役立つ基礎知識といえるでしょう.

